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したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

insectcell.exblog.jp
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2009年 03月 18日

Cell strainをクローニングしてウィルス生産能UP

セルラインからクローニングされたセルストレインが、元のラインよりも効率よくウィルス生産できました、というお話。

Zhang H, Zhang YA, Qin Q, Li X, Miao L, Wang Y, Qu L, Zhang A, Yang Q.
A cell strain cloned from Spodoptera exigua cell line (IOZCAS-Spex-II) highly susceptible to S. exigua nucleopolyhedrovirus infection.
In Vitro Cell Dev Biol Anim. 2009 Feb 28.

 IOZCAS-Spex-IIというセルラインを16cell/mlの濃度にした上で384wellのプレートに撒き、単一細胞培養を得ました。それぞれをラインの順化培地で飼い、2月ほどかけて実験に十分使える規模のセルライン(セルストレイン)にしました。

 クローニングする前のセルラインはウィルスの感染率が50%ほどでしたが、クローニングによって90%に向上しました。また、ウィルス粒子の産生能も2.4x10^7 OBs/mLから7.1x10^7 OBs/mLに向上しました。



 セルラインを構成する細胞たちは同じ遺伝子セットを持つという意味で元々クローンですが(蚊とかだと違うけど)、そのキャラクターは統一されておらず、ウィルスに対する感受性についても細胞ごとの差があると考えられます。クローニングによってウィルス感受性の高い細胞が選抜できたということは、セルラインを構成する細胞たちのキャラクターが単一でないことを示しています。今回のように選抜した単一細胞由来のセルストレインのキャラクターの単一性はどこまで保たれるのか、というところにも非常に興味があります。また、変化していった場合に、安定的なキャラクターの構成というものがあるのか、それともそういった極値的なものが存在せず無限に変化を続けるのか、という問題に対する理解は、セルラインを再現性の高いコントロールしやすい実験材料として扱う為にも必要であると考えられます。もし、極値がなく変化し続けるのであれば、その変化が全くもって現在存在する理論で説明不可能なのか、それともカオスなどの理論によって説明できるのか、そういったことも非常に面白い課題だと思います。

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by koretoki | 2009-03-18 15:14


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