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したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

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2008年 12月 21日

Sf-9をなだめてすかしてP450生産

P450は様々な生物に広く存在する450nmに吸光ピークをもつ酸化酵素で、結晶化させて構造解析をするために大量の生産が必要とされています。
P450を生産する際、E.coliだとN末膜アンカードメインを調整して遺伝子導入しないと発現されません。例えば、hydrophobic部をbovineCYP17A1にする、とか、2番目のコドンをアラニンに変える必要があります。

昆虫細胞バキュロウィルスベクター系を用いれば、そういう必要がないので、虫・草・人のP450生産に使われています。しかし、全てのP450を生産することはできず、P420(P450にならなかった失敗作)しかできない場合もあります。

今回著者らは、バキュベクでうまく作れるPapilio polyxenes由来のCYP6B1と、うまく作れないPapilio multicaudatus由来CYP6B33を比較し、後者の欠点を改善することで、これまでバキュベクで作りにくかった種類のP450を生産するための方法を開発しました。
Mao W, Berenbaum MR, Schuler MA.
Modifications in the N-terminus of an insect cytochrome P450 enhance production of catalytically active protein in baculovirus-Sf9 cell expression systems
Insect Biochem Mol Biol. 2008 Jan;38(1):66-75.

CYP6BのN末端40ペプチド配列間の比較から、1-20のSAD配列と32番目のペプチドに狙いをつけます。
実際CYP6B33の1-20までをCYP6B1のものに入れ替えたキメラ配列と、32をAlaにした変異体をバキュベクでSf9に導入したところ、しっかりと生産するようになりました。また、生産物の活性を評価すると、V32Aの1ペプチド変異の方が高くなる結果が得られました。
シグナルアンカーと膜リンカーの効果の相互作用も考察されています。



遺伝子工学的手法をもちいて生物や細胞を生産の場にすることは、今や一般的な手法となっていますが、試薬同士の相性など、利用の妨げになって、「それはそういうもの」として避けて通ってしまいがちなところに、生物システムの本質が隠れているように思いました。

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by koretoki | 2008-12-21 02:01


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