2008年 11月 29日
昆虫は抗体を持たず、人間が持つ後天免疫を持ちません。しかし、最近の研究では、昆虫の自然免疫系にも、適応しながら働く性質があることが示唆されてきました。また、ある菌の侵攻を受けた雌の子どもが、その菌に対する耐性を持つ現象も見つかっています。 著者らは、同じ病原に対する2度目の応答の適応が、AMPsではなく、血球の貪食作用によることを示しました。 Linh N.Pham,Marc S.Dionne,Mimi Shirasu-Hiza,David S.Schneider A Specific Primed Immune Response in Drosophila Is Dependent on Phagocytes PLoS Pathogens March2007 Vol.3 Issue 3 e26 まず、肺炎球菌Streptococcus pneumoniaeを用いた「予防接種」が有効であることから、ハエの免疫応答が適応することを示しました。 次に、ある病原への適応が、他の病原への適応を引き起こすかどうかしらべるため、熱処理した菌で予防接種した個体に、病原を与え、生存率を見ました。 結果、引き起こすことはなく、また、半分以上の菌では、その菌に対する適応すら引き起こしませんでした。 むしろ肺炎球菌のほうが特別なようです。 そこで、肺炎球菌以外の菌で予防接種した個体が肺炎球菌への適応を示すか調べました。こっちも起こりませんでした。 こうして、肺炎球菌がハエの肺炎球菌耐性を特異的に誘導する事が分かりました。 ハエの免疫系では、Toll pathwayとimd pathwayが良く研究されています。そのどちらが免疫の適応に効いているのかを調べるために、それぞれの欠損ミュータントを用いて予防接種の実験を行いました。 結果、Tollがクリティカルな要因で、imdは免疫適応に必要ないことがわかりました。 最後に、液性応答(AntiMicrobialPeptide)、細胞性応答のどっちが免疫適応に関わるのかを調べました。 肺炎球菌に暴露した時のdefensin転写量をqRT-PCRで測り、肺炎球菌がdefensinの転写をあまり誘導しない事と、AMPは1週間も経つとピークが消えてしまって、これは免疫適応の持続時間と合わないことからAMPは免疫応答のcriticalな要因でないことが示されました。 また、ビーズ(貪食の対象となる)の挿入による血球の貪食の阻害が、肺炎球菌暴露個体の生存率を下げる事が、貪食が免疫適応に必要であることを示しました。 予防接種の際にビーズを与えると免疫適応が阻害される事も上記の考えを支持します。 ちなみに、肺炎球菌で予防接種した個体のE.coliに対する適応は、起こりませんでした。 植物では、ある病原の侵入が防御系全体の活性を高めること、が大事らしいので、やっぱり違うんだなと思いました。 あと、一般的に昆虫の免疫はこうだ、というよりかは病原の種類によって活躍する免疫の種類が違うって話の方がしっくりくると思います。 人気ブログランキングに参加しています。 本家に追いつけるように頑張りますので応援よろしくお願いします。
by koretoki
| 2008-11-29 04:24
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