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したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

insectcell.exblog.jp
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2008年 11月 27日

免疫による自傷<マルピーギ管の場合>

昆虫の自然(innate)免疫は、体液性の免疫、メラニン化、細胞性免疫で構成されています。
液性免疫であるフェノールオキシダーゼがもたらす自傷を避けるため、周辺の組織表面をメラニン化して守る働きが観察されますが、著者らは、これが組織を障害すると考えました。

Ben M.Sadd and Michael T.Siva-Jothy
Self-harm caused by an insect's innate immunity
Proc.R.Soc.B(2006)273,2571-2574

実験にはチャイロコメノゴミムシダマシtenebrio molitorが用いられました。isofemale lineの中から、体重が0,10-0,11gの個体のみを選んで使いました。
免疫による自傷<マルピーギ管の場合>_e0160319_12171216.jpg

まずは、免疫反応によるメラニン化を、他個体から移植したマルピーギ管で観察しました。
免疫反応はナイロンファイバーで誘導しました。
図のように、ナイロンファイバーの近くに移植されたマルピーギ管の方が、激しくメラニン化されました。ナイロンファイバーを挿入されていない個体に移植したマルピーギ管はメラニン化されませんでした。
免疫による自傷<マルピーギ管の場合>_e0160319_12172431.jpg

つぎに、ナイロンファイバーを挿入した個体のマルピーギ管と、ナイロンファイバーを挿入するのに十分な穴を開けた(NF入れない)個体のマルピーギ管の運動を比べました。
マルピーギ管のアッセイには、図にしめした'oil drop'テクニックが用いられました。
実験はnatural oilの中で行います。
マルピーギ管の一端は生理食塩水に浸たし、もう一端を浸さないようにします。
すると、マルピーギ管の蠕動運動によって一端から生理食塩水がマルピーギ管の中を通り、矢印の方向に反対の端に運ばれます。
そうして出来た油の中の生食の雫の量をを、画像処理によって測り、その大きさをマルピーギ管の元気さの指標としました。
結果、ナイロンファイバーを挿入した群は、挿入しない群より有意に元気がなくなりました。
グラフを見ると大体2/3くらいになっています。



a modified 'oil drop' techniqueかっこいいです

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by koretoki | 2008-11-27 12:20


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