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したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

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2008年 11月 17日

Eカドヘリンが幹細胞のpluripotencyを制御する場合

ES細胞を始めとする幹細胞の分化全能性に、culture growth factor environmentとcell-cell interactionがクリティカルな役割を果たしていました、という論文。

Chou YF, Chen HH, Eijpe M, Yabuuchi A, Chenoweth JG, Tesar P, Lu J, McKay RD, Geijsen N.
The Growth Factor Environment Defines Distinct Pluripotent Ground States in Novel Blastocyst-Derived Stem Cell
Cell. 2008 Oct 31;135(3):449-61.

ES細胞は陥入前のblastocystのInnerCellMassからつくります。
陥入後のblastocystからつくる幹細胞は、EpiS細胞です。
マウスのEpiS細胞はマウスのES細胞よりヒトのES細胞に似ています。
これらの関係から、著者らは細胞のpluripotencyが、決まったものではなく、環境によるところが大きいと考えました。

著者らは、ES細胞をつくるときのと同じICMに3種のgrowth factor(GF)を作用させ、新規のblastocyst由来幹細胞を樹立しました。
3つのGFの名前、bFGF、Activin、BIOからFAB-S細胞と名づけました。
マウスのES細胞が立体的なコロニーをつくるのに対し、FAB-S細胞は単層のコロニーをつくりました。
また、FAB-S細胞は維持のためにLIF、Bmp4といったGFや血清を必要としませんでした。

遺伝子発現を他の幹細胞と比べると、pluripotencyに関連する遺伝子(Oct4,Nanog,Sox2)は共通でしたが、FAB-S細胞には胚細胞の分化に関わる遺伝子(Stella,Blimp1,Daziなど)がありませんでした。
さらに、FAB-S細胞はtelatomaをつくる事が出来ませんでした。
telatomaをつくれないとpluripotencyは認められません。

しかし、FAB-S細胞に2つのGF(LIF,Bmp4)を加えたことろ、telatomaをつくり、またキメラマウスを作出することも出来るようになりました。
その後、LIFとBmp4抜きの培養を行っても、FAB-S細胞はtelatoma、キメラ共につくりました。

著者らは"partial pluripotency"と書かれていますが、GFによってpluripotencyが獲得されるところがすごく面白いと思います。


次に、ふつうのFAB-Sと、GFによってpluripotencyを得たFAB-Sとの比較が行われました。
結果、前者でEカドヘリンの発現が低いのに対し、後者は高い発現が見られました。
実際にふつうのFAB-SにEカドヘリンを過剰発現させるとpluripotencyが備わったので、EカドヘリンがFAB-Sのpluripotencyを制御していることがわかりました。


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by koretoki | 2008-11-17 14:43


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