2016年 06月 18日
「RNA-seqから見つけた遺伝子が実際に良い遺伝子であった例」をよく求められるのですが、これはRNA-seqで見つけた6遺伝子のうち2個でknockoutすると良いことがあった例です。 あと、CHOの論文で5番目の著者がCHOさん。 PMID: 26854539 Targeted gene deletion using DNA-free RNA-guided Cas9 nuclease accelerates adaptation of CHO cells to suspension culture 工業的なタンパク質生産に用いるCHO細胞は無血清培地に馴化させており、また、足場のない浮遊細胞を行います。著者らは、ゲノム編集技術を用いてCHO-K1細胞の無血清・浮遊培養への馴化促進を試みました。 まず開発の対象を得るため、CHO-K1細胞を無血清培地で浮遊培養して馴化させました。継代は10回行い、7回目ほどで馴化が完了したようです。馴化中の細胞及び馴化後の細胞についてRNA-seqを行い、DESeqを用いて発言変動遺伝子(DEG)を抽出しました。得られたDEGより、馴化に伴って発現の減少するDEGとして減少幅の大きい6遺伝子を選抜しました。 次に、それらの6遺伝子についてDNA-free RNA-guided Cas 9の系を用いてknockout したCHO-K1細胞を作成し、無血清・浮遊培養への馴化を行いました。結果、6遺伝子中2個の遺伝子については、それぞれのknochoutによって馴化が促進されました。また、アンプリコンシークエンスにより、馴化前後で細胞集団中のknochoutが成功している細胞の割合を調べたところ、馴化促進効果のあった2遺伝子については、knochoutの成功している細胞が集団中の割合を増加させていました。 人気ブログランキングに参加しています。 応援よろしくお願いします。 元々CHO細胞の無血清浮遊化にかかる期間は1ヶ月程度ですので、ゲノム編集の手間を考えると実用性には疑問がありますが、RNA-seqで見つけた良さそうな遺伝子の答え合わせの例題としてクリアであると思います。通常のCRISPR/Cas9の系ではプラスミドやレンチウィルスの配列がホスト細胞ゲノムに導入されてしまうことがあり抗体医薬製造用の細胞開発では不適切であるため、CHO細胞のゲノム編集にはDNA-free な編集系の適用が必要であると著者らは述べており、ここが本研究の重心のようです。なので、DEGを得るためにどのサンプル間で比較したのかがわからなかった点、シークエンスした細胞のうち1つの実験区でのみ培養初期(培地に細胞を播種してすぐ)にサンプリングを行ってしまった点(なのでひとつだけPCAで外れてる)も致し方ないのかなと思いました。
by koretoki
| 2016-06-18 11:49
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