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したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

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2013年 06月 15日

内部寄生蜂のvenom をLC-MSとRNA-seqで調べたよ

内部寄生蜂というのは、宿主の体内に住んで育つ蜂のグループのことです。
当然宿主の体内に入ってれば、宿主の免疫系から「おまえだれ?」って聞かれたりするわけで、侵入してるのがバレたらボコボコにされてしまいます。

内部寄生蜂の親は子どもが宿主の体内でボコられないようにvenom (なんか"毒"とは直訳しない雰囲気ある)を宿主の体内に打ち込んで、宿主の血球によう包囲を抑制しようとします。

キイロショウジョウバエを宿主として寄生する蜂がいて、キイロショウジョウバエはモデル生物で情報が多いので、キイロショウジョウバエ側の免疫の研究は結構されてました。でも、寄生蜂の方はほとんど情報がなかったので、今回著者らはvenom がどんなタンパク質なのかを調べました。

PLoS One. 2013 May 23;8(5):e64125. doi: 10.1371/journal.pone.0064125. Print 2013.
Integrative approach reveals composition of endoparasitoid wasp venoms.
Goecks J, Mortimer NT, Mobley JA, Bowersock GJ, Taylor J, Schlenke TA.


実験では2種類の寄生蜂、L. b. とL. h. を使いました。
RNA-seq で寄生蜂腹部で発現してる遺伝子を特定し、LC-MS で特定したvenomu 線の中身のペプチドをそこにはりつけることで、venom のタンパク質を特定しようとしています。

RNA-seq から作ったトランスクリプトデータに、mass で得たアミノ酸配列を貼付けたところ、L.b. で129のvenom 遺伝子候補、L.h. で176のvenom 遺伝子候補がそれぞれとれました。

それらの中から、雌蜂特異的に発現するもの(雄vs雌のRT-PCR比較から)、
venom 腺特異的に発現するもの(雌体vsvenom 腺のRT-PCR比較から)を絞り込むことにしました。
※他の蜂のvenomとして、Calreticulin や、Heat-shock protein 70 が知られているので、上記の方法ではそれらの遺伝子のような、他の組織で他の仕事をしているvenom 遺伝子を取りこぼすリスクがあるそうです。

ランダムに10個のvenom 遺伝子候補を選んでRT-PCRしたところ、
L.b. でもL.h. でも10個中の8個は雌特異的に発現をしていました。

L.b. ではそれら8個の遺伝子はvenom 腺以外のところでも発現していました。L.b. では、ショウジョウバエ寄生蜂Asobara japonica と同様に、venom 遺伝子が卵巣など他の組織でも発現しているのでしょう。
一方で、L.h. では8個の遺伝子はvenom 腺特異的な発現をしていました。


次に、既知のvenom 遺伝子と相同性のある遺伝子を集めて、分泌シグナルついてるやつだけを集めました。
GO解析をしたところ、L.b. のサンプルでは、antioxidant activity がエンリッチしていました。
ショウジョウバエの免疫応答では、酸素ラジカルを発生させていると考えられているので、L.b. は抗酸化タンパクをvenom として用いて、免疫に対抗していると考えられます。



RNA-seq とMASS を組み合わせた方法は、ゲノムが分かっていない生物の分泌タンパクを特定するのにすごい効くと著者らは述べています。




寄生蜂の話をするといっつもvenom っていう謎物質が出てきて苦しめられてきたのですが、蜂によって全然違うんですね。
今回の研究で見つかった200個くらいのvenom 候補をひとつづつ試してもらって、venom の成分完全同定されるようになると期待しています。
あと、いままでGO階席でぱりっと意味をとる論文に出会えてなかったので、すごい絞り込んだ遺伝子群でG0解析→エンリッチみっけ→エンリッチさせている遺伝子これな→知見と会わせてばっちり考察してるのが楽しかったです。





以下メモ

L.b., L. h. について
幼虫か蛹に産卵
L. b. は卵を免疫から隠して、血球が卵の表面にふれるのを防ぐ。宿主の免疫は寄生されていても強い。
L. h. は宿主の免疫を破壊する。

最初はcDNAをクローニングして進めた。4つとれた。でも、100くらいはありそうなので、ほんの表面だけしか見れていない。

P. puparum のmass もやったけどトランスクリプトがないから56個の予測venom のうち12個しか取れなかった。

Chelonus inanitus のESTsやった。29個みつかって、いくつかは完全にユニークな配列だった。

Microctonus hyperodae でRNA-seqやった。8個の全長venom 遺伝子見つかった。

Nasonia vitripennis でmass やってゲノムのにはっつけたら79venom 遺伝子見つかった。

→核酸+アミノ酸のアプローチがいい
→NGSでせめるのがいい



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by koretoki | 2013-06-15 10:30


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