したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

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カテゴリ:未分類( 99 )


2008年 11月 23日

エクダイソンが細胞増殖を制御するpathway

Siaussat D, Bozzolan F, Porcheron P, Debernard S.
The 20-hydroxyecdysone-induced signalling pathway in G2/M arrest of Plodia interpunctella imaginal wing cells.
Insect Biochem Mol Biol. 2008 May;38(5):529-39. Epub 2008 Jan 19.

e0160319_1431091.jpg


著者らは、RNAiを使って20Eと関連する3つの転写因子EcR、USP、HR3の関係を調べました。
20Eのシグナル系が有効であるか向こうであるか、は培養細胞のうちG2/M期にあるものの数で見ました。
また、PiCycBの機能を調べるため、上記3つの転写因子単独のRNAiと、それぞれとPiCycBを一緒にRNAiしたときを比べました。
結果、EcR、USP、HR3がBcyslin合成を制御して細胞の増殖をコントロールしていることが分かりました。

著者らは2007年の論文
Siaussat D, Bozzolan F, Porcheron P, Debernard S.
Identification of steroid hormone signaling pathway in insect cell differentiation.
Cell Mol Life Sci. 2007 Feb;64(3):365-76.
において、EcR、USP、HR3がβtubulinの発現促進によって分化を促進すると述べています。


この2つの論文によって、20Eが細胞の傾向を増殖から分化にシフトしていくための、「分裂の抑制」と「分化の促進」の両方の働きについて簡単な図にまとまりました。
左のpathwayが2007、右のが2008のものです。
左は細胞の形態的変化、右は細胞の細胞周期の変化をみることで行われました。

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by koretoki | 2008-11-23 14:29
2008年 11月 20日

ポリドナvirで甲虫細胞系に遺伝子導入

寄生蜂が寄主に寄生するためには、寄主の免疫系を制御する必要があります。
その因子として、venomやpolydnavirusが知られています。
polydnavirusを遺伝子導入のベクターとして用いたお話です。

D.Gundersen-Rindal,D.E.Lynn,and E.M.Dougherty
TRANSFORMATION OF LEPIDOPTERAN AND COLEOPTELAN INSECT CELL LINES BY GLYPTAPANTELES INDIENSIS POLYDNAVIRUS DNA
In Vitro Cell.Dev.Biol-Animal 35:111-114,February 1999

著者らは、gypsy mothの寄生蜂であるGlyptapanteles属の蜂のpolydnavirusを用いました。
実験には、Glyptaの寄主であるgypsy moth胚由来2つ、gypsy moth幼虫脂肪体由来1つ、Ti.ni.(Lepidoptera)胚由来1つ、Sp.fr.(lepi)蛹卵巣由来1つ、Pl.in.(lepi)翅成虫盤由来1つ、He.vi.(lepi)精巣由来1つ、Di.un.(Coleoptera)胚由来1つ、Tr.co.(Hymenoptera)胚由来2つ、Ae.al.(Diptera)卵由来1つ、計11の細胞系が用いられました。

それぞれの培養に対し、寄生蜂Glypta indiensisのメスの2つの卵巣と毒腺を添加し、観察、PCRによる遺伝子導入の確認を行いました。


結果、寄主を含む全てのLepidoptera由来細胞系とColeoptera由来の細胞系でpolydnavirusによる遺伝子導入が確認されました。
また、細胞系の由来組織の違いによる導入の可否はありませんでした。

細胞の形態や、増殖能はvirus添加後1週間は顕著であり、1-2ヶ月も経つとほとんど分からなくなってしまいました。
大体100回継代くらいまでは導入されたvirusの存在が確認され、特に長いものだと300回継代後でも確認されました。



lepiを狙った寄生蜂の持つpolydnavirusが、全く関係なさそうなcoleoの細胞に導入される―それなのに、HymeとDiではダメだというのがとても面白かったです。


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by koretoki | 2008-11-20 20:07
2008年 11月 20日

雌アリはいっぱい交尾したい

ひとつの遺伝的多型(日本語おかしい:single genotype)から複数の表現型多型が出現する仕組みはわかっていません。
著者らは、表現型の可塑性が親の遺伝的背景に影響されるを調べました。
Tanja Schwander and Laurent Keller
Genetic Compatibility Affects Queen and Worker Caste Determination
SCIENCE Vol.322 24 October 2008

アカシュウカクアリのコロニーをいくつか用意し、それぞれから雌雄の生殖虫を1頭ずつ取り出し、1回だけ交尾させた後、産まれた個体の表現型を調べました。
結果、組み合わせによって産まれた個体の生殖虫/労働虫の割合が大きくばらつきました。
おどろくことに、8割が生殖虫になってしまう組み合わせすらあります。

メスは多回交尾をしなければ、カーストの割り振りが偏ったコロニーをつくることになってしまうようです。
著者らは、このことが多回交尾を進化させたと述べています。

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by koretoki | 2008-11-20 01:58
2008年 11月 19日

アンチエイジングには、テロメアーゼと制がん遺伝子

テロメアーゼの過剰発現で、マウスの寿命が延びたようです。

Tomás-Loba A, Flores I, Fernández-Marcos PJ, Cayuela ML, Maraver A, Tejera A, Borrás C, Matheu A, Klatt P, Flores JM, Viña J, Serrano M, Blasco MA.
Telomerase reverse transcriptase delays aging in cancer-resistant mice.
Cell. 2008 Nov 14;135(4):609-22.

テロメア構造は生物の寿命に関連すると言われています。
ヒトやマウスでテロメアを伸張させている酵素テロメアーゼの過剰発現は、培養条件下の細胞の分裂回数を無限にすることが知られています。
しかし、個体での機能については、テロメアーゼの発現が発がんイニシエーションとなるため、調べる事が困難でした。
この問題を回避するため、著者らは、がん耐性のあるマウス作製しました。
このマウスはがん抑制遺伝子である、p53、p16、p19ARFを過剰発現することで、がんに耐性を持っています。
このマウスで、テロメアーゼを過剰発現させると、加齢に伴う全身の衰えを改善しました。

最大で40%ほど寿命を延ばせるようです。
培養細胞のように不老不死というわけにはいかないのでしょうか。



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by koretoki | 2008-11-19 18:18
2008年 11月 18日

アブラムシのJHtiterをLCMSで測る

アブラムシには翅があるやつとないやつがいます(有翅型、無翅型)
著者らは、2つの型で血中JH濃度の差がないことを示しました。

Schwartzberg EG, Kunert G, Westerlund SA, Hoffmann KH, Weisser WW
Juvenile hormone titres and winged offspring production do not correlate in the pea aphid, Acyrthosiphon pisum.
J Insect Physiol. 2008 Sep;54(9):1332-6. Epub 2008 Jun 26.
有翅型の個体とその親、無翅型の個体とその親についてJHtiterを調べました。

著者らは、アブラムシの足か触角を切り、体を圧迫して滴状に出てきた血液をキャピラリーで集めました。それを6ー12頭やって1μlになったら、それを100μlのmethanol/isooctane(1:1)に入れ、またスタンダードとしてmethopreneも入れます。
調整後濃縮して、島津のLCMS-2010Aで分析しました。

結果、JH3のみが検出され、その濃度は30-163pg/μlでした。
有翅型と無翅型の間に有意な差はありませんでした。


LCMSにいろんなものを入れてみたくなりました。
ちなみに、この方法で測れるのは12pg(検出限界)から40pg(定量限界)のものまでだそうです。

そういえば
サバクトビバッタの孤独相群生相スイッチには、卵巣ろ胞細胞、精液小胞、食道下神経節の神経分泌細胞に存在する6kD のペプチドが関連しているそうです。下記の論文では免疫染色で局在を確認したペプチドについて、MSをとることで擬陽性を除いています。
M.M.Rahman et al.
Localization of the phase-related 6-kDa peptide(PRP) in different tissues of the desert locust Schistocerca gregaria -Immunocytochemical and mass spectrometric approach
Journal of Insect Physiology 54 (2008) 543-554

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by koretoki | 2008-11-18 14:47
2008年 11月 17日

Eカドヘリンが幹細胞のpluripotencyを制御する場合

ES細胞を始めとする幹細胞の分化全能性に、culture growth factor environmentとcell-cell interactionがクリティカルな役割を果たしていました、という論文。

Chou YF, Chen HH, Eijpe M, Yabuuchi A, Chenoweth JG, Tesar P, Lu J, McKay RD, Geijsen N.
The Growth Factor Environment Defines Distinct Pluripotent Ground States in Novel Blastocyst-Derived Stem Cell
Cell. 2008 Oct 31;135(3):449-61.

ES細胞は陥入前のblastocystのInnerCellMassからつくります。
陥入後のblastocystからつくる幹細胞は、EpiS細胞です。
マウスのEpiS細胞はマウスのES細胞よりヒトのES細胞に似ています。
これらの関係から、著者らは細胞のpluripotencyが、決まったものではなく、環境によるところが大きいと考えました。

著者らは、ES細胞をつくるときのと同じICMに3種のgrowth factor(GF)を作用させ、新規のblastocyst由来幹細胞を樹立しました。
3つのGFの名前、bFGF、Activin、BIOからFAB-S細胞と名づけました。
マウスのES細胞が立体的なコロニーをつくるのに対し、FAB-S細胞は単層のコロニーをつくりました。
また、FAB-S細胞は維持のためにLIF、Bmp4といったGFや血清を必要としませんでした。

遺伝子発現を他の幹細胞と比べると、pluripotencyに関連する遺伝子(Oct4,Nanog,Sox2)は共通でしたが、FAB-S細胞には胚細胞の分化に関わる遺伝子(Stella,Blimp1,Daziなど)がありませんでした。
さらに、FAB-S細胞はtelatomaをつくる事が出来ませんでした。
telatomaをつくれないとpluripotencyは認められません。

しかし、FAB-S細胞に2つのGF(LIF,Bmp4)を加えたことろ、telatomaをつくり、またキメラマウスを作出することも出来るようになりました。
その後、LIFとBmp4抜きの培養を行っても、FAB-S細胞はtelatoma、キメラ共につくりました。

著者らは"partial pluripotency"と書かれていますが、GFによってpluripotencyが獲得されるところがすごく面白いと思います。


次に、ふつうのFAB-Sと、GFによってpluripotencyを得たFAB-Sとの比較が行われました。
結果、前者でEカドヘリンの発現が低いのに対し、後者は高い発現が見られました。
実際にふつうのFAB-SにEカドヘリンを過剰発現させるとpluripotencyが備わったので、EカドヘリンがFAB-Sのpluripotencyを制御していることがわかりました。


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by koretoki | 2008-11-17 14:43
2008年 11月 14日

私寝てるから起きたらおこして

Ishita M.Shah,Maria-Halima Laaberki,David L. Popham and Jonathan Dworkin
A Eukaryotic-like Ser/Thr Kinase Signals Bacteria to Exit Dormancy in Response to Peptidoglycan Fragments
Cell, Volume 135, Issue 3, 486-496, 31 October 2008

バクテリアはsporeを作って休眠することで環境の変化に適応します。
著者らは、sporeを作って休眠しているバクテリアが、他のバクテリアの増殖に伴って放出される細胞壁のムロペプチドを感じて起きることを発見しました。

著者らは、spore状態のE.coliやB.subtilisの培養にPeptidoglycanなどを加えることで、濃度依存的に出芽率が上がる事を示しました。
また、そのレセプターがPrkCという内向きにSer/Thr kinaseを持つ膜貫通蛋白で、それなしに今回の反応が見られないことも示しています。

この発見は、活動期のバクテリアを対象にした現行の抗生物質とは全く異なる作用機構の抗生物質の開発に役立つと考えられています。



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by koretoki | 2008-11-14 03:19
2008年 11月 13日

トランスポゾンを操って細胞系をつくれたら

教科書、「細胞の分子生物学第4版」で見つけたのですが
Bodnar AG,OuelletteM,Frolkis M,Holt SE,Chiu CP,Morin GB,Harley CB,Shay JW,Lichtsteiner S,Wright WE.
Extension of life-span by introduction of telomerase into normal human cells.
Science.1998 Jan 16;279(5349):349-52.
多細胞生物の身体を構成する正常な細胞には分裂回数に上限があります。その要因としてテロメア仮説が提唱されています。
著者らはヒトの正常細胞にテロメアーゼを遺伝子導入すると、導入細胞は無限に増殖しました。

同じ事が昆虫でもできるのではないかと期待しましたが、昆虫では事情が違うようです。
Sakai T,Fujiwara H.
Detection and distribution patterns of telomerase activity in insects.
Eur J Biochem.2000 May;267(10):3025-31.
著者らはテロメアーゼの発現を、昆虫の様々な組織、セルラインで調べました。
すると、ゴキブリとコオロギでは全身で発現していました。
カイコ、2種のショウジョウバエ、センチニクバエの全身とセルラインでは全く発現がありませんでした。

テロメアーゼを遺伝子導入しても、セルライン化は望めない様。
昆虫はテロメアーゼを使わずに、テロメアを維持しているようです。
James M.Mason,Radmila Capkova Frydrychova,and Harald Biessmann
Drosophila telomeres:an exception providing new inshts
BioEssays 30:25-37,2008
テロメアを伸ばす方法は全部で3つあります。
ひとつは、テロメアーゼのような特別な転写酵素を持つ方法。
もうひとつは、反復配列の非相互な遺伝子組み換えで片方をのばす方法。
最後に、テロメア特異レトロトランスポゾンの狙ったtranspositionがあって、ショウジョウバエはこれを採用しています。


これは私の想像ですが、昆虫のテロメア構造がレトロトランスポゾンを扱うことで維持されているならば、トランスポゾンの扱い方が分かれば、ヒトの細胞にテロメアーゼを導入するように、無限増殖性細胞集団を作れるかもしれません。

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by koretoki | 2008-11-13 23:00
2008年 11月 12日

成虫の中腸は幼虫の中腸幹細胞からできてる

著者は最近JHrecepterを見つけたパリー様

Parthasarathy R, Palli SR.
Proliferation and differentiation of intestinal stem cells during metamorphosis of the red flour beetle, Tribolium castaneum.
Dev Dyn. 2008 Apr;237(4):893-908.

PDFで取れるので美しい写真も是非ごらんください。
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/117922529/PDFSTART

完全変態昆虫の成虫盤は、蠅の翅とか蛾の脚などではよく知られています。しかし、中腸の成虫盤についてはあまり知られていませんでした。
中腸には多核の細胞(筒型細胞、杯状細胞、分泌細胞の3種がいる)と2nの幹細胞がいて、中腸上皮が傷害をうけた時に幹細胞が分裂します。 変態に際して、中腸上皮の外の中腸成虫盤の細胞が増えて移動して来ると考えられてきました。
著者らは蚊と蛾で研究してきましたが、ゲノム情報がないことと初代培養が出来ないことが、幹細胞の研究の障害になっていました。
そこで
最近ゲノム解読がが完了したコクヌストモドキTribolium castaneumを材料に、中腸の初代培養とRNAiをやりました。

Knock-down effect of EcRA and USP on the proliferation of ISCs in the cultured midguts.Injections of dsRNA were done at 24hr AEFL.Twenty-four hours prior to harvesting,10µM 20E or JHⅢ or both are added.The tissues are pulsed with BrdU during the final 12 hr of culture.

結果、以下のことが分かりました。
●幼虫の中腸幹細胞が増えて、成虫の中腸を作っていた。
●20Eは中腸幹細胞の増殖を促進する。
●20Eは中腸多角細胞のアポトーシスを促進する。
●変態する中腸で、JHⅢは20Eに拮抗的に働くが、単独では何もしてない。
●EcRAとUSPが中腸リモデリングの際にシグナル伝達をしている。


データがもの凄く綺麗な印象を受けました。
中腸の初代培養を当然のように行っていることがとても恐ろしいです。
培養法としてLoeb式が有名ですが、国内でそれを出来る研究室を私は2つしか知りません。
リファにLoebさんの名前は見当たりませんし、さぞかし素晴らしい方法を開発されたのだと思いますが、マテメソには"The midguts dissected under aseptic conditions were cultured in Ex-Cell 420"としか書いてないのです。


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by koretoki | 2008-11-12 00:54