したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

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2008年 11月 26日

抗生物質はいきなり使うものじゃない

昆虫が体内に分泌する抗生物質は、侵入する微生物を殲滅するというよりかは、血球が食べた後に体内に残ってる微生物を抑えるためでした。
Eleanor R. Haine,Yannick Moret,Michael T. Siva-Jothy,Jens Rolff
Antimicrobial Defense and Persistent Infection in Insects
Science 21 November 2008:Vol. 322. no. 5905, pp. 1257 - 1259

日本語abstがついてたので貼り↓
 昆虫が地球上に存在するようになって4億年間、昆虫の持つ強力な抗菌性免疫防御機構に対して、細菌が抵抗性を進化させて、昆虫が死滅したことはほとんどない。今回われわれは、感染後の細菌排除が極めて速やかにおこり、かつ誘導性の抗菌活性が上昇し始めるのは、大部分(99.5%)の細菌が駆逐された後のみであることを発見した。われわれの実験により、昆虫の恒常的な免疫応答を受けて生き残った細菌は、その後に抵抗性が高まることが判明した。これらの結果から、誘導された抗菌物質は細菌感染の解消に働くのではなく、おもに昆虫の体内に持続的に存在する細菌から昆虫を守るために機能していることが示唆される。これらの発見は、自然界においてどのように抗菌ペプチドが用いられているかを理解することで、薬剤抵抗性のリスクを回避する治療戦略が明らかになる可能性を示している。



昆虫が微生物の侵入を受けた時、いつもONになってる「血球やフェノールオキシダーゼを用いた防御」と、侵入を受けて誘導される「抗生ペプチド分泌による防御」の2つの反応が起こります。
後者の誘導性の反応は、被侵入後1-3時間経って誘導されます。その後12-48時間後にピークを迎え、1週間以上残ります。
免疫反応には、多くのコストがかかるため、このような長期に渡る反応には、適応的な意義があると考えられてきました。
しかし、最近、ショウジョウバエで、同じ微生物2度目の侵入の際に、抗生ペプチドよりも血球が多く働いていることがわかりました。
一方で、著者らは、長期に渡る抗生ペプチドの働きが、血球に耐性を持った微生物を仕上げるためだ、と提唱してきました。

これらの前提に立って、3つの予想を立てました。
1:微生物のほとんどは抗生ペプチドが誘導される前に殺される。
2:いくらかの微生物は血球から逃れて生き残る。
3:そうして生き残った微生物は寄主の免疫に高い耐性を持つ。

確かめるために実験をしました。
実験には甲虫のTenebrio molitor雌成虫とStaphylococcus molitorを使いました。

まず、虫に注入した多量の菌の生存率を調べました。
結果、菌の99,5%が最初の30分で死にました。
次に、菌を注入した虫の血液を取り、そこから細胞を取り除いたものの、殺菌活性を調べました。
結果、1時間後から活性が出始め、1日ほどでピークを迎えました。7日目から下がり始めましたが、28日目でもピークの1/5ほどの活性を保っていました。
これで仮説1が説明されました。


続いて仮説3の説明です。
著者らは「虫に注入して生き残った菌」と「虫に注入してない菌」を、感染の経験のない虫に注入し、菌の生存率を調べました。
結果、「注入して生き残った菌」が有意に多く生き残りました。


こうして、抗生ペプチドが血球の食べ残しの微生物を抑えるために産生されている、という考えが示されました。

特に説得力があったのは、抗生ペプチドについて「次の侵入に対する予防、という説明では最低2回の侵入が必要である。しかし、食べ残しを抑える、という説明なら、1回の侵入で十分である。」とした節です。


カブトムシのディフェンシンだったらこれで説明が付く気がしますが、モンシロのピエリシンはどうなんでしょうね??
今回は、微生物に関する話でしたが、昆虫の防御は寄生蜂にもベクトルが向いてると思います。
それも含めてきりっと説明できたらかっこいいですね


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by koretoki | 2008-11-26 13:54


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