2016年 06月 16日
産業用の動物細胞の研究開発では、増殖や生産性が良くなることを期待して培地を改造することがあります。アミノ酸、ビタミン、乳酸、グルタミン酸など多数の培地成分について濃度を振って培養試験を行うためサンプル数が多くなりがちなので、どうやって捌くかが悩みの種になっています。 タンパク質製造のための細胞の培養試験では、細胞数、生産タンパク質濃度の他、糖や乳酸などの代謝物の測定を行うことが多いのですが、細胞数の測定の自動化の点で特に問題がありました。例えば、最も普及している自動細胞数測定装置であるvicellは、一度の測定に500μLのサンプルを要求します。同時に多くの試験を行うにはひとつひとつの培養を小さくしたいのですが、小さくし過ぎると細胞数が数えられなくなってしまうのです。 そこで著者らは、侵襲性のある方法ではあるものの細胞数を測定可能な小さな培養系を用いることにしました。 PMID 24227746 Microarray platform affords improved product analysis in mammalian cell growth studies 培養系の構築は下記の通りです。 polystyrene-co-maleic anhydride でコートしたガラス板の上にpoly-L-Lysineと塩化バリウムの混合液をスポットします。スポットにはMicrosSys 5100-4SQ microcontact microarray spotter という装置を用いるようです。 スポットが十分に乾いたら、200細胞を含んだ60nlの培養液をその上にスポットします。ここで、培養液には、アルギン酸が1%溶かされています。元のスポットに含まれるバリウムがアルギン酸を架橋してアルギン酸バリウムゲルになります。ちなみに人工イクラはアルギン酸カルシウムゲルです。 このようにして固定した細胞を含むゲルたちを、培地で封入して乾燥を防ぎます。 実験終了後はガラス板上に固定したままインビトロジェンのlive/dead viability/ cytotoxicity kit for mammalian cellsを用いて生細胞数を測定することができます。 論文中ではこの系を用いて培地の改変を行っています。 ひとつのガラス板には6x8個の培養をつくることができ、ひとつの装置にはガラス板が8枚乗るそうなので、6x8x8で384の培養をつくることができます。10日間の培養中に4回測定するとしてn=5でやっても20。ひとつの装置で20ほどの条件を調べることができる計算です。 著者らが引用していたambr15は15mL程度のバイオリアクターを24個並列に実験可能ではありますが、ambr15はクリーンベンチひとつ独占するので単位ラボ面積あたりでは利点がありそうです。 人気ブログランキングに参加しています。 応援よろしくお願いします。 96穴プレート振るのと比べて果たして買うかなと思いました。 一方で、培地の最適化で使う材料はなるほどなと思いました。
by koretoki
| 2016-06-16 11:43
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