人気ブログランキング | 話題のタグを見る

したっぱ昆虫細胞研究者のメモ

insectcell.exblog.jp
ブログトップ
2009年 09月 04日

同じc-DNAから組み換えCYPを作っても、昆虫細胞とヒト細胞の場合でkineticsが違ってくる

研究したい蛋白質のc-DNAから、微生物や細胞系を利用して組み換え蛋白を得ることは広く行われていますが、研究対象が酵素の場合は注意なようです。
Christensen H, Mathiesen L, Postvoll LW, Winther B, Molden E.
Different enzyme kinetics of midazolam in recombinant CYP3A4 microsomes from human and insect sources.
Drug Metab Pharmacokinet. 2009;24(3):261-8.

 ヒトCYP3A4はヒトの肝臓と腸で最も多いCYPで、治療薬などの分解に寄与していることで知られています。この研究ではCYP3A4が催眠鎮静薬であるミダゾラムを分解する酵素kineticsについて注目し、ヒト細胞と昆虫の細胞でそれぞれ発現させたミクロソーム内組み換えCYP3A4を比較しました。著者らはそれぞれのCYP3A4を基質であるミダゾラムと反応させて、主生成物である1'-hydroxymidazolam(1'-OH MDZ)と副生成物である4-hydroxymidazolam(4-OH MDZ)の量をLC-MSで測定し、Km値(ミカエリスメンテン定数?)とVmaxを求めました。結果、1'-OH MDZを生成する際に、ヒト細胞由来recCYP3A4は典型的なミカエリスメンテンkineticsを示し、一方で昆虫細胞由来recCYP3A4は基質阻害kineticsを示しました。総じてヒト細胞由来recCYP3A4は昆虫細胞由来に比べて高いKm値を示し、このことはvivoの状況と関連するので重要だと述べています。



 組み換え蛋白発現で酵素を作る場合に、異なる補助因子の影響が注目されてきていて、例えば、電子供与蛋白であるcytochrome b5はc-DNA発現させたCYP酵素活性に影響を与える重要な因子として同定されているそうです。もちろん著者らはcytochrome b5にも配慮して実験を行っています(昆虫細胞区ではwith and without coexpressed cytochrome b5の2つが設定されていたり)。HoustonとKenworthyの仮説に"異なるrecombinant sourceでは酵素の活性部位が違う"というのもあるそうです。異種昆虫間でも同じことが起こるのでしょうか?ハエの酵素をSf9に作らせたら違った、とか、錦秋鐘和のを大造由来セルラインに作らせたら違った、とか・・・

人気ブログランキングに参加しています。
応援よろしくお願いします。
FC2 Blog Ranking


by koretoki | 2009-09-04 03:15


<< 細胞の個性が決まる仕組み      月砂埃、吸っても大丈夫? >>